フリージャーナリスト 森川天喜(あき)の取材記録

フリージャーナリスト 森川天喜の取材記録です

デジタルデトックスのススメ

先日、NHKの『あさイチ』で、鎌倉で月一回開催されている「デジタルデトックスツアー」が紹介された。

このツアーの案内役は、鎌倉でカフェを営む宇治氏で、筆者は以前、このツアーを取材させていただき記事を書いたこともある。

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宇治氏がこのツアーを始めようと思ったきっかけは、昨今、若者を中心に「デジタル依存症」ともいうべき症状に陥っている人が多いことに危機感を感じたこと。

海外では、オンラインゲームを長時間やりすぎたことによる死亡事故、インターネット利用の長時間化による離婚・解雇の発生といった社会問題が起きていることが報道されている。

国内でも、子供同士がSNSを中心としたネットワークでやりとりしているために、親や教師が異変に気づくのが遅れ、犯罪を予防することができなかったという報道がされた事件があったことも記憶に新しい。

そこまで極端な例でなくても、スマホを持っていると、ついつい着信やSNSの書き込みをチェックしてしまい、他のやるべきことがなかなか進まない、なんていうことは、多くの人が経験していると思う。

先日、放送されたNHKあさイチ』では、ママ友同士のSNSコミュニティーを面倒と思いつつも、SNSをやめれば周囲から疎外されるのではないかという恐怖から、やめるにやめられない主婦の例が紹介されていた。

番組で紹介された人は、SNSでメッセージをもらって、「すぐに返信しないと相手からどう思われるだろう」と思うと、家事や家族との食事の間もスマホを手放せないのだという。これでは、場合によっては鬱(うつ)にもなりかねない。マメな人ほど要注意といえるだろう。

とはいえ、今の時代、スマホや携帯などのデジタル機器とまったく無縁の生活を送るというのは、なかなか難しいことだ。鎌倉の「デジタルデトックスツアー」も、参加者にアナログ人間になることをすすめているわけではない。

「デジタルデトックスツアー」では、ツアー開始と同時に参加者の携帯を回収してスタッフが預かり、鎌倉のお寺やハイキングコースなどを散策。ツアー終了時に返却することになっている。

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4~5時間のツアーの間、デジタル機器を手放し、「スマホって、持っているとついつい触ってしまうけど、数時間なら、なくても意外と平気じゃん!」というのを体験してもらい、デジタル機器との上手な付き合い方を学ぶのがツアーの趣旨だ。

このツアーに参加したことで、実際に週に一度はデジタルデトックスデーを設けるようになったとか、家族でどこかに出かける間だけは携帯をオフにするなど、デジタルデトックスを実践しはじめた人もいるそうだ。

デジタルデトックスデトックスツアーを行う意味は、これだけにとどまらない。

宇治氏の世代は、ちょうど、アナログとデジタルの境目の世代。昔は携帯などなく、彼女との待ち合わせで遅れそうになったときなど、いろいろなドラマがあった。実は、そういったことにこそ、本来の人間同士のつながりのロマンがあり、それを若い世代に伝えるのが自分たちの世代の役目であると、宇治氏は語る。

また、デジタル化により、本来、人間がもっている五感が鈍くなってきているというのを、常日頃から感じるという。昔は、今ほど連絡を取り合っているわけでもないのに、何かあるときは、それこそ、『虫の知らせ』を感じた。日常生活の中で、少しでもアナログ時間を確保することで、人間が本来もつ感覚を失わないようにすることも大事な伝えたいことのひとつだという。

さらに、デジタル機器が発する電磁波は人間の脳や体に様々な影響を与えることから、たまにデジタルデトックスをすることは、健康面を考えてオススメしたいとのこと。

自分自身の心と体を守るためとはいえ、「つながりを断つ」などと大げさに考えると、実行は難しい。しかし、一日のうちの限られた時間や、たまの旅行の時に携帯を手放すことぐらいなら十分、可能なことなのではないだろうか?