旅行コラムニスト・森川孝郎の日本列島探検隊!

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【富士山】世界遺産に登録されても、いいことばかりじゃない?

海の日の翌日の7月21日~23日にかけて、富士山に登ってきた。
五合目の山小屋では、夕刻、一面に広がる雲海に映る「影富士」を見ることができ、また、翌朝には見た「ご来光」の美しさには、心から感動した。

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登山中、八合目あたりで天気が崩れはじめ、頂上に着いた頃には風と雨が強くなっていたので、頂上の火口周辺を歩く「お鉢巡り」ができなかったのは残念だったが、それでも、富士山の素晴らしさは、十分満喫することができた。

しかし、三日間、富士山に滞在してみて少々気になったのは、意外なほど登山客が少ないことだ。
2013年に世界遺産に登録され、その直後、多くの人々が列をなして登山する映像をテレビで見た印象が残っていたので、今回も、山小屋などはギューギュー詰めを覚悟で出かけた。


ところが、登山口にあたる五合目の山小屋は、私を含めて三組しか宿泊していなかった。山小屋のご主人にきいてみると、私が訪れた直前の三連休は、かき入れ時なのだが、宿泊客は少なかったという。
さらに、六合目付近の山小屋はもっと深刻で、前日の宿泊客は一組だけだったという。ご主人は「本当に商売あがったりだ」と嘆いていた。

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私が歩いた「須走ルート」登山道は、「富士宮ルート」や「吉田ルート」に比べると、もともと人の数は多くないのだが、それにしても夏山登山のトップシーズンにしては、閑散としている。
「須走ルート」は八合目で「吉田ルート」と合流するので、さすがにここまで来ると、だいぶ人が増えたが、それでも八合目の山小屋できいてみても、例年より人が少ないということだ。

原因については、様々な要因が考えられるが、ひとつは最近、日本列島のあちこちで火山活動が活発化しているので、登山を控えようと考える人が増えたのかもしれない。
また、ここ数年、早い時期から台風がかなり多く発生する。この日も天気図を見て、「もしかしたら台風が来るかも」と、登山を控えた人が多かったのだろうか。

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しかし、山小屋のご主人と話をしてみると、もっと根本的な理由があるようだ。
まず、世界遺産に登録された直後、富士山ブームが巻き起こり、ものすごい数の人が富士山に押し寄せた。その結果、山小屋の予約が取りづらくなり、また、一部のマナーの悪い登山客が、トラブルを起こすこともあったらしい。
その結果、それまで毎年のように来てくれていた常連客が、「富士山はもうダメだ」と思い、来なくなってしまったのだという。


先日、訪れた群馬県の「富岡製糸場」も、世界遺産登録直後の熱は冷めたようで、ゆっくり見物することができたが、なにごともブームはそう長続きせず、ブームで訪れていた人々は、やがて去って行く。

常連客も世界遺産熱で訪れる客も少なくなったというのが、今の富士山なのだ。

世界遺産登録は、文化財やかけがえのない自然を「人類の宝」としてきちんと保護するという意義があり、世界遺産登録が悪いわけではないが、このような負の側面もあるのだということは、認識しておかなければならないだろう。

それから、もう一つ山小屋のご主人が仰っていたのは、「今の富士山はお金を取り過ぎ」ということだ。たしかに、今回登山してみて、ずいぶんお金を使ったと思う。
まず、夏期はマイカー規制が実施されているので、クルマで来た場合、ふもとの駐車場にクルマを駐め、シャトルバスで登山口に向かうことになる。ここで、駐車場代のほかにシャトルバスの運賃がかかる。
つぎに、登山口で「富士山保全協力金」として、一人あたり1000円を支払う。この支払いは任意なのだが、多くの人は払っているのではないか。

さらに、高いなーと思うのが、山小屋での食事代や飲み物代などだ。富士山では、山小屋への物資はブルトーザーで搬送している。その費用がかかるから仕方がない面もあるのだが、標高が高いところに行けば行くほど物価が高くなるのだ。
ある山小屋では、500ミリペットボトルのコーラが570円、カップラーメンが600円もしていた。以前、麻生さんが総理大臣のときに、カップラーメンの値段を聞かれ「400円くらいかな?」と答えてヒンシュクをかっていたが、富士山に来れば、その経済感覚もあながち間違っていない。


また、山小屋のトイレを借りる場合、一律200円かかる。こうしてみると、家族4人で山小屋でちょっと休憩するだけで、かなりの出費になることが分かる。
ちなみに、山小屋の宿泊費は、食事付きで一泊7000円~8000円くらいが相場で、これは割と良心的なのではないかと思う。

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最後に、今回登山してみて、富士山の自然の美しさや、頂上に到達したときの達成感は、本当に素晴らしいものだった。
世界遺産に登録されて3年目の夏を迎え、様々な意味で正念場を迎えているのかも知れないが、多くの人々に愛される山であり続けることを祈りたい。