フリージャーナリスト 森川天喜(あき)の取材記録

フリージャーナリスト 森川天喜の取材記録です

風流な京都・貴船の川床で知った、IT化の波と地球環境の変化

京都の夏の風物詩ときいて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか?

一番に思い浮かぶのは、七月の一ヶ月間、ぶっ通しで行われる京都最大の祭り「祇園祭り」かもしれない。街中を豪華絢爛な山鉾(やまほこ)が巡行していく様子を見ると「あー、京都の夏だな」としみじみ思う。

 

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筆者が、涼しげでいいなと思う京都の夏の風物は、鴨川の上流、貴船川で楽しむ川床料理だ。


川床とは、渓流の流れの中に杭(くい)を打ち、その上に床を渡してつくった座敷で本格的な京会席の料理を楽しむという、なんとも風流で贅沢な遊びなのだ。

最近は、貴船以外でも川床を見かけることがある。しかし、川床の元祖は貴船であり、大正時代に、「ふじや」という今も貴船にある旅館の先々代が、川の中に床几を置いてお客さんに涼をとってもらったのがはじまりなのだ。

また、貴船以外で見る川床の多くは、「川床」とはいうものの、川の上ではなく川岸に座敷をしつらえただけのものが多い。その意味でも、貴船こそが、川床の本家本元だといえるだろう。

 

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貴船は、昔から避暑地として知られる場所で、京都の市街地が30度を超える暑さのときでも、25度前後しかなく、かなり涼しく感じる。

また、川床に実際に座ってみると、足下を流れていくせせらぎの音が心地よく、爽快な気分になる。


川の流れに足を浸すこともできるが、かなりヒンヤリとしており、10分と浸かっているのは難しいという。

 

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ちなみに、料理は少々値が張るのは確かだが、旬の食材を使った本格的な京会席を、このような風流な場所で楽しめるのだから、ぜひ一度は試していただきたいと思う。

さて、この川床、やっかいなのは突然、雨が降り始めたときだ。

上を見上げると、きちんとした屋根はなく、すだれがかかっているのみ。これは、自然の風景を楽しみながら食事をするが目的なので仕方がない。屋根を取り付けたら、薄暗くなってしまい雰囲気がなくなってしまう。

最近は、インターネット環境さえあれば国土交通省XバンドMPレーダーが1分間隔の更新で雨雲情報を知らせてくれるため、雨雲が近づいてくると、お客さんを旅館の建物の中に避難するように誘導する。夏は夕立が多いので、かなりの頻度で、避難が発生するという。

こんな風流な場所でも、意外なほどIT化が進んでいるのだ。

 

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それから、川床をやっていて困るのが水害の発生だ。ここ3年は毎年連続して、川床を支える杭が流される被害が発生していおり、そのたびに、一週間ほど川床を休止しなければならないという。

近年、都心でもゲリラ豪雨が発生したりするなど、地球規模の環境の変化と連鎖し、日本の気候も確実に変化しつつあるのを実感しているが、気候の変化は、風流な川床の存続にも影響しかねない。