フリージャーナリスト 森川天喜(あき)の取材記録

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鎌倉で、「すごく上手くいってるな」と思う飲食店

鎌倉の飲食店ときいて、どのようなイメージを持たれるだろうか?

途切れることなく観光客が押し寄せ、まさに「ドル箱」というイメージをお持ちの方も少なくないかもしれない。しかし、事情はそう簡単ではない。

鎌倉は、なまじ東京に近いことから、圧倒的に宿泊客よりも日帰り客が多い。また、近隣の横浜に、一大飲食店街である「横浜中華街」があったりするため、ランチは行列ができるけれども、ディナーの時間帯はほとんど観光客がいなかったりする。

結果、あまり高い客単価は期待できず、なかなか商売は難しく、新しい店ができては消えていくというのが現実だ。店を成功させるには、際立つ特徴や、ハイレベルなセンスが要求されるのだ。

そんな中で、最近できたばかりの店だが「すごく上手くいっているな」と思う、鎌倉の飲食店を紹介しよう。

紹介するのは、先日、オールアバウトの記事を執筆するために、取材をさせていただいた、鎌倉駅西口のナポリピザレストラン『Latteria BeBe(ラッテリア ベベ)』(以下、BeBe)という店だ。

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鎌倉には、すでに『Pizzeria GG(ジージー)』や『dada(ダダ)』などのピザの有名店があり、まさに激戦区といった感じだが、そんな中、BeBeは今年4月にオープンしたばかりだが、すでに地元で評判になっている。

果たして、どんなお店なのだろうか?

BeBeは、イタリア・ナポリでピザ職人として修行を積んだ兄の山崎健太郎(以下、敬称略)と、イタリア南部のプーリア州で、特産のフレッシュチーズの修行を積んだ弟の大志郎の兄弟が切り盛りしている。

まず、強調しておきたいのは、二人ともきちんとした修行を積んだ職人で、"かなり確かな腕"を持っているということだ。そして、とても謙虚な人柄で、そこに共感を覚える人も、少なくないはずだ。

この店の一番の特徴は、レストランに"自家製のフレッシュチーズをつくるための工房"を併設しているという点だ。この工房こそが、この店の心臓部なのだ。

モッツアレラなどのフレッシュチーズというと、日本では高級スーパーで売られている富裕層向けの高級食材というイメージだが、イタリアの主婦たちはボールを持って、近所のお店にできたてのチーズを買いに行くのだという。日本の主婦が、豆腐を買う感覚に似ているといえるだろう。

このようなイタリアでは当たり前の、「できたてのフレッシュチーズを食べる文化を日本の食卓へも届けたい」というのが、この店のコンセプトであると山崎は語る。

その言葉どおり、この工房でつくられたチーズは、レストランで提供されるだけではなく、店頭での販売も行っている。そして、その値段が驚くほど安いことに驚かされる。なんと、モッツァレラチーズが100g、460円なのだ。

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もし、チーズをイタリアから輸入するとなれば、いったん冷凍しなければならず、防腐剤も入れなければなるまい。スーパーで売られているチーズは、鮮度はあまり期待できず、輸送費等がかさむので値段も割高だ。

例えとして微妙かも知れないが、スーパーで高いお金を出して買うチーズは、ロンドンあたりで高くてあまり美味しくない回転寿司を食べるのと、似たようなものなのかもしれない。

一方、BeBeのチーズは、鎌倉のお隣の横浜市の牧場で絞りたての生乳を使い、毎朝、店の敷地内の工房でつくられている。もちろん、防腐剤も使用しておらず、新鮮そのものだ。

このような美味しいチーズを使い、本場イタリア仕込みのピザ職人がピザを焼いてるのだから、美味しいと評判になるのも、考えてみれば当たり前の話だ。

なお、このレストランで食べることができるのは、ピザだけではない。日本では余り馴染みがないが、「BURRATA(ブッラータ)」などのフレッシュチーズもメニューにある。

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ブッラータは、チーズを巾着状にしたものの中に、柔らかいチーズと生クリームが入っている南イタリア・プーリア州の名産品。生ハムやトマトなど塩気のあるものと一緒に食べると、まさに絶品だ。

さらに、このチーズをパスタに乗せた「チーズ屋のカルボナーラ」というメニューもあるという。まだ試していないが、次回、店を訪れたら食べてみたいと思う。


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